中小企業金融円滑化法が昨年3月末に失効したことへの対応策の一つとして、昨年から簡易裁判所の特定調停制度を活用するスキームが導入されています。

ところが、本年2月、東京地方裁判所は、弁護士会に「円滑化法終了スキームとしての特定調停の利用について」と題する文書により、気になる要請を行っています(下線部は筆者)。

・・・ところで,特定調停スキームは,経営改善計画案やこれに基づく調停条項案について金融機関や信用保証協会等から同意が得られる見込みがある,すなわち,少なくとも金融機関等の支店の取引担当者レベルでは既に同意が得られており,最終決裁権限者(本店債権管理部等)の同意が得られることが見込まれるなどの状況にあることを前提として,簡易裁判所による早期の紛争解決を目指すものです。そのため,このような同意が得られることが見込まれない事案は,特定調停スキームの対象事案としては想定されていません。仮に,申立人が簡易,迅速,低廉な手続を望み,特定調停スキーム利用のために簡易裁判所へ特定調停の申立てをしたとしても,上記の前提を満たしていない事案では,特定調停スキームで想定されているとおりには手続が進まず,調停成立や17条決定といった,申立人の望むような結論を得ることが困難であると予測されます。
 つきましては,特定調停スキームの利用を検討するに当たっては,申立代理人において,日本弁護士連合会作成の前記手引き書を参考にして,対象案件を適切に見極めていただきますようお願いいたします。

従前からこの特定調停スキームは、申立前に債務者である企業が金融機関と十分な協議を行うことを前提している「事前調整型」であるとされてきました。
しかし、今般裁判所が上記のような見解を表明していることの背景には、制度導入後の申立事件において、想定されていた以上に金融機関が調停における合意に応じない実情があるのではないかと思われます。

今後、特定調停を利用するにあたっては、金融機関の担当者との事前相談をしたうえで、調停成立の見込みを見極めることが重要となってくるでしょう。

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