20日、改正会社法が参議院で可決し、成立しました。施行は来年4月1日となる見通しです。

http://www.nikkei.com/article/DGKDASDC20005_Q4A620C1EA2000/

(法律案要綱、新旧対照条文等はこちらから)
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00151.html

改正箇所は多岐にわたりますので、重要なところを見ていきたいと思います。

1.社外取締役設置義務化の見送り

法制審議会では、コーポレート・ガバナンス強化の一環として社外取締役の設置を義務化する案も提案されましたが、経済界等からの反対論が根強く、結局義務化は見送られることになりました。

しかし、改正法では、一定の要件を満たす公開会社が社外取締役を選任しない場合は、株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明や事業報告への記載が義務づけられます。
 社外取締役を「置かない理由」ではなく、「置くことが相当でない理由」の説明・記載が求められます。さらに、今後、会社法施行規則において、社外監査役が2名いることのみをもって「置くことが相当でない理由」とすることはできないとの規定が設けられる予定です。
したがって、今後、会社は、「置くことが相当でない理由」について積極的かつ説得的な説明・記載を行うことを要求されることになりますが、これはかなりハードルが高いと思われます。報道によると、法務省は、こうした厳しい説明・記載義務を設けることで、事実上社外取締役を義務づけるものと考えているようです。

なお、改正法の附則では、施行後2年を経過した後、社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案した上で、必要があると認める場合には、社外取締役設置の義務付け等所要の措置を講ずることが明記されています。

 

2.監査等委員会設置会社の新設

社外取締役の導入を促すため、監査等委員会設置会社制度が新設されました。監査等委員会設置会社とは、監査役・監査役会が設置されない代わりに、3名以上(過半数は社外取締役)の「監査等委員である取締役」によって構成される監査等委員会が設置される会社です。

 

3.社外取締役の範囲の変更

社外取締役については、役員の2親等以内の親族や親会社の取締役や使用人が除外されることになりました。一方で、過去10年間当該会社または子会社の当該会社の業務執行取締役等を務めていない者は社外取締役になれることになりました。
多くの会社では、親会社の使用人(従業員)が取締役となっていますので、実務に与える影響が大きいと思われます。

社外取締役の範囲の変更は、改正法施行時に社外取締役がいる場合には、施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時から適用されることになります。
改正法の施行が平成27年4月である場合、3月決算の会社であれば、遅くとも平成28年6月の定時株主総会において、改正後の要件を満たす社外取締役を選任する必要があります。

 

4.多重代表訴訟制度の新設

多重代表訴訟制度とは、親会社の株主が子会社の役員の責任について株主代表訴訟ができる制度です。ただし、提訴できるのは親会社の議決権または発行済み株式の1%以上を所有する株主に限られる等非常に厳格な要件となっています。