昨年4月に施行された改正労働契約法第20条は、有期労働者と無期労働者との間で期間の定めがあることにより不合理な労働条件を相違させることを禁じています。

ここ数日の間、有期労働者が使用者に対し、労働契約法第20条違反を理由として損害賠償請求訴訟を提起したとのニュースが相次いでいます(引用文は一部個人名等を修正)。

 東京メトロ売店員、格差是正求め提訴へ 「賃金に差別」
http://www.asahi.com/articles/ASG4Z5KK0G4ZULZU00G.html

東京メトロの売店で働く有期雇用の社員ら4人が、正社員との間に不合理な賃金差別があったとして、東京メトロの子会社を相手取り、約4200万円の損害賠償を求める裁判を5月1日に東京地裁に起こす。有期雇用の社員への差別を禁じる労働契約法20条による全国初の裁判になるという。・・・・訴状などによると、東京メトロの100%子会社であるメトロコマースと1年契約を繰り返して雇用されている原告は、接客や売上金の計算、商品の発注など正社員と同じ仕事をしているのに、1月当たりの賃金や賞与が少なく、退職金はなかったという。

契約社員:正社員と仕事同じ 手当支払い求め日本郵便提訴
http://mainichi.jp/select/news/20140509k0000m040075000c.html

日本郵便(東京都千代田区)の契約社員3人が8日、正社員に支払われる年末年始手当などが支払われないのは改正労働契約法に違反しているとして、日本郵便に計738万円の支払いなどを求め東京地裁に提訴した。今後、関西でも9人が同様の訴訟を起こす方針。日本郵便には約19万人の非正規労働者がおり、勝訴すれば大きな影響が予想される。
 ・・・訴状などによると、Aさんは2007年6月、6カ月の契約社員として働き始め、15回の契約更新を重ね、郵便物の仕分けや配達などを担当してきた。仕仕事の内容が同じ正社員には支払われる年末年始勤務手当(12月29〜31日は1日4000円、1月1〜3日は1日5000円)が支給されず、住居手当なども支給対象外。

これまで労働者側からは、労働契約法第20条を有期労働者および無期労働者間の雇用条件の格差是正のための有効な根拠として活用していくことが唱えられており、今後同様の訴訟が増加することになるでしょう。

労働条件の相違が不合理と認められるかどうかは、

  1. 職務の内容(業務の内容および当該業務に伴う責任の程度)
  2. 当該職務の内容および配置の変更の範囲
  3. その他の事情

を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されます。
ただ、実際には、個々の労働条件は、当該企業の人事政策、処遇体系、労使の関係のあり方と切り離して考えることはできませんので、裁判所は非常に難しい判断を迫られそうです。

また、労働契約法第20条違反の就業条件は無効となると考えられていますが、その場合に労働条件がどうなるかという点については議論が多く、今後大きな問題となるでしょう。