昨年以来の食品偽装事件を受けて、3月28日、消費者庁は、メニュー・料理等の食品表示にかかる景品表示法の考え方について」の成案を公表しました。
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/140328premiums_4.pdf
「考え方」は、表示が景表法の優良誤認表示(同法4条1項1号)に該当するかは、業界の慣行や事業者の認識ではなく、一般消費者が著しく優良と誤認するか否かの観点から判断されるとしています。
そして、客観的・科学的に実際のものが表示のものより上回ったか否かではなく、あくまで一般消費者が実際と異なる表示によって、実際のものよりも優良と認識され、誘引されるか否かによって判断されるとの基準を示しています。
具体的には、次のような表示は景表法問題となるとされています。
1.種類に関する表示
- ブラックタイガーをクルマエビと表示
- ブロイラーを地鶏と表示
- ホイップクリーム(植物油を泡立てたもの)を生クリームと表示
- スパークリングワインをシャンパンと表示
- ランプフィッシュの卵の塩漬けをキャビアと表示
2.産地に関する表示
- 実際には北海道産のエゾアワビを使用しているのに、房総地方の風景写真と共に房総アワビを使用していると表示
- 中国産の栗をフランス産の栗と表示
3.製法に関する表示
- 整形肉や牛脂注入加工肉を焼いた料理を焼いた料理を「ステーキ」として表示
- 市販のパンを自家製パンと表示
- 機械打ち麺を手打ち麺と表示
- 紙パックのジュースをフレッシュジュースと表示
4.その他の品質に関わる表示
- カマンベールチーズとそれ以外のチーズを使用しているにもかかわらず、カマンベールチーズとのみ表示
一方で、「考え方」は、「一般的な料理の名称として確立しているものであって、かつ、その食材がその料理に現に使われていることが社会的に定着している場合など、一般消費者が、その料理の選択において、それの食材の違いに通常影響されないと認められる場合」は、直ちに景表法上問題となるものではないとしています。
この例としては、合鴨肉を使用しているにもかかわらず「鴨南蛮」と表示する場合や「サケ弁当」、「サケおにぎり」等の材料として、一般に「さけ」、「サーモン」として販売されているもの(いわゆるニジマスを含む)が挙げられています。
「考え方」は、一般消費者の判断を基準としながらも、公正競争規約やJAS法も考慮したものとなっています。
上記の「さけ」、「サーモン」として販売されているものの範囲については、厚労省通知である「アレルギー物質を含む食品に関する表示について」を引用して「サケ科のサケ属、サルモ属に属するもの、陸封性を除いたもの」とされています。
アレルギーの問題としては、このような範囲が妥当であったとしても、消費者の立場からは、ニジマスがサケとして販売されることに違和感を持つ人が多いのではないでしょうか。
産地や種類について異なる表示が問題となるのは当然ですが、現実に事業者が自らのメニュー等を表示する際の判断は難しい場合が出てきそうです。
例えば、「考え方」では冷凍魚を鮮魚と表示すること自体は問題ないとしながらも、紙パックのジュースをフレッシュジュースと表示することは、JAS法等を根拠として問題としているのですが、消費者の立場からは一貫性がないように思われます。
また、中小零細事業者にとっては、JAS法等の近接する法令や公正競争規約等を考慮しなければならないことは負担が大きいといえましょう。
今後の運用が注視されます。