就職希望者から「就職受験料」を徴収したドワンゴに対し、厚労省が中止を求める行政指導を行ったことが報じられています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140302-00000197-yom-sci

・・・ドワンゴは、インターネットで応募手続きが簡単になり就職希望者が殺到しているため、「本気で働きたい人に絞り込む」目的で受験料制度を導入した。受験料は、運営する「ニコニコ動画」の語呂合わせなどで2525円に設定。交通費などが多くかかる地方在住者は免除し、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の学生に限って徴収するという。

同社などによると、行政指導があったのは2月中旬。厚労省は「受験料制度が他社にも広がれば、お金がない学生の就職活動が制約される恐れがある」として 問題視。来春卒業予定者の採用では、既に手続きのピークを過ぎているとして事実上、不問にしたが、16年春卒の採用からは徴収しないよう求めたという。

 労働者の募集に関し、職安法は「いかなる名義でも報酬を受けてはならない」と規定。厚労省は指導の中で、ドワンゴの受験料が「報酬」にあたるかどうかは明確に判断しなかったといい、同社の担当者は「受験料は報酬にはあたらない」との認識を示している。

 
職業安定法第39条(報酬受領の禁止)は、「労働者の募集を行う者及び第三十六条第一項又は第三項の規定により労働者の募集に従事する者(以下「募集受託者」という。)は、募集に応じた労働者から、その募集に関し、いかなる名義でも、報酬を受けてはならない。」と規定しています。
ところが、厚生労働省による「労働者募集業務取扱要項」には、職業安定法第39条の解説として、次の記載があります。
なお、募集とは、労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人をして労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘することであり、採用試験は募集に応じた者から雇用することとなる者を選考するために行うものであるため、募集とは別の行為である。このため、採用試験の手数料を徴収することは法第39条の報酬受領の禁止には該当しない。
このように、厚労省の行政解釈においては、「採用試験の手数料」は「報酬」に該当しないことになります。
この「採用試験の手数料」とは、もともと応募者多数のため試験会場を借りなければならない場合の賃借料等の実費について、その一部を応募者に負担させることを認める趣旨であると思われます。

それでは、ドワンゴの「受験料」は「試験の手数料」といえるのでしょうか。

ドワンゴのサイトによると、「受験料」は2,525円とさほど高額ではありませんが、「本気で当社で働きたいと思っているかたに受験していただきたい」ことを目的としていることや受験料は全額寄付するとしています。
今回の行政指導において、厚労省は報酬該当性について明確に判断しなかったのですが、上記のようなドワンゴ自身が表明している「受験料」の捉え方からは、一義的に「採用試験の手数料」と解することも難しいのではないかと思われます。
いずれにしても、厚生労働省は、企業が採用時に求職者から金銭を徴求する風潮が広まることを懸念していることが窺えますので、企業の採用活動においては慎重な対応が必要でしょう。

(追記)
3月3日にドワンゴからプレスリリースがありました。
「報酬」該当性については厚労省内でも意見が分かれているようですが、企業が採用時に求職者から金銭を徴求する風潮が広まることを非常に危惧しているとのことです。
今後「就職受験料」が広まる場合は厚労省からアクションがなされる可能性が高いでしょう。