海外旅行の添乗員が、労働時間算定が難しい場合に一定時間働いたことにする「みなし労働時間制」(労働基準法38条の2)の適用は不当として、残業代支払いを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷は、1月24日、添乗員側の主張を認め、会社側の上告を棄却しました。これにより、会社に対し約31万円の支払いを命じた2審・東京高裁判決が確定しました。
「みなし労働時間制」の適用可否について、最高裁が判断を示すのは初めてです。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83887&hanreiKbn=02
最高裁判決は、日程や業務内容はあらかじめ具体的に確定していること、添乗員に対しては携帯電話を持たせてツアー中も報告を求め、終了後に業務日報を提出させていることから、添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認めがたく、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」には当たらないとしています。
携帯電話や電子メール等の通信手段の発達により、使用者は、事業場外の従業員の労働時間の把握が容易になっています。今回の最高裁判決は、こうした現状理解に基づき、携帯電話や添乗日報等によって労働時間の把握が可能であったことを理由にみなし労働時間制の適用を否定しています。
今後の裁判においては、みなし労働時間制が認められる場合は非常に限定されてくることになると思われます。
みなし労働時間制の導入時において合理的であったとしても、現時点においては合理性が失われている企業は多いのではないでしょうか。
使用者は、安易なみなし労働時間制の利用は避けるべきですし、現在導入している場合はあらためて必要性を再検討するべきでしょう。