倒産したスーパーに対し買い物客が1万3000人が債権者となった事件が報道されています。

スーパーは現金決済であるため顧客が債権者になることは通常ありませんが、このスーパーは、買い物客の釣り銭をカードに記録して預かり、一定額に達すると預かり額を上回る額面のギフト券と交換するサービスを提供していたことにより、これらのサービスの登録者が債権者となりました。

資金決済法上、プリペイドカードのような前払式支払手段の発行者は、未使用残高の2分の1以上に相当する発行保証金を供託することが義務づけられています。
今回のサービスが資金決済法の適用を受けるものであるかは明らかではありませんが、スーパーは供託をしておらず、預り金の記録もなされていないようです。

また、本サービスでは、精算時にスーパー側が100円未満の釣り銭を預かり、合計2千円をためると、2500円分のギフト券などと交換できるカードを発行していたとのことですが、業としての預り金を規制する出資法上の問題はなかったのでしょうか。

預り金は各人につき2,000円以下となっていることや一般債権者に対する配当の見込みがないため今後大きな混乱はないようですが(手続上、配当見込みがない場合に破産債権の調査は行いません)、もしも金額が大きかったり、一般債権者に対する配当がなされるならば債権額の確定等で大きな問題が生じることになります。

ところで、破産手続においては、裁判所は債権者に対し破産手続開始通知書を発送するのですが、その費用は申立人が負担し、申立の際に郵便切手を裁判所に予納する扱いです。
本件のように13,000人の債権者が存在し、1名につき82円分を予納する場合、その合計は1,066,000円となります。報道によるとスーパーは予納することができたとのことですが、予納できる程度の現金が残っていない場合は大変な事態となっていたところです。

実務上、プリペイドカード等を発行している会社が自己破産等を申し立てる場合、申立代理人である弁護士は、本件のような「隠れ債権者」がいないかどうかを確認し、そのための実費を見込んで早めに現金等を引き継いでおくことが必要でしょう。