今月4日、飲食店経営会社が、「食べログ」を運営するカカクコムに店舗情報の削除などを求めた訴訟で、札幌地裁は請求を棄却する判決を言渡しました。
 
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG0402Y_U4A900C1CR8000/

判決理由で長谷川恭弘裁判長は「原告の会社は法人であり、広く一般人を対象に飲食店を営業しているのだから、自己の情報を『個人』と同じようにコントロールする権利はない」と指摘。さらに「原告の請求を認めれば、情報が掲載される媒体を選択し、望まない場合は掲載を拒絶する自由を原告に与えることになる。他人の表現行為や得られる情報が恣意的に制限されることにもなり、容認できない」との判断を示した。

本判決については、表現の自由や知る権利との関係では、個人と企業を峻別した上で、企業が自己の情報をコントロールする権利を認めない点が注目されます。この判断の背景には、法人登記等で一定の企業情報が開示されている実態や「企業は公的存在である」との前提があるように思われます。

企業からは「記事に事実と異なることが書かれているがどうしたらよいか」といった相談を受けることがあり、企業が自社について事実に反する情報が広まることについてセンシティブであることは常々感じるところです。
しかし、裁判所は、憲法上の人権である表現の自由を重視する傾向があることは間違いがありません。
実務的には、企業が自己の情報を掲載した記事について、メディアに訂正・削除を求める場合は、当該記事が名誉毀損や業務妨害等による不法行為にあたることを主張する必要があるでしょう。

上記判決の原告は2012年ごろ、食べログに「客を40分待たせている」などと事実とは違う否定的な内容を投稿されたため、来客数が激減したと主張していたとのことです。

このような記事は掲載時に直ちに真実性が疑わしいとはいえませんので、判決の結論は妥当といえますが、一見して事実に反することや誹謗中傷性が明らかな記事の場合は結論が変わってくるでしょう。