不当表示に対する課徴金制度を導入するための景品表示法(景表法)が先の臨時国会において改正されました。施行は公布日(平成26年11月27日)から1年6月以内とされています。
課徴金制度は、不当表示を防止するための中心的役割となっていくでしょう。本稿では制度の概要をまとめます。
(概要) http://www.caa.go.jp/representation/pdf/141127premiums_1.pdf
1.課徴金納付命令
(1)対象となる行為
課徴金納付命令の対象となる行為は、優良誤認表示と有利誤認表示です(8条1項)。ただし、不実証広告規制にかかる表示行為について、一定の期間内に当該表示の裏付けとなる合理的根拠を示す証拠の提出がない場合は、不当表示と推定され、課徴金が賦課されます(8条3項)。
(2)課徴金として賦課される金額
課徴金として課徴金額は、後述の課徴金対象期間における対象商品・役務の売上額の3%です。ただし、課徴金額が150万円未満(すなわち、売上額が5000万円未満の場合)は賦課されません(8条1項)。このように課徴金額に下限が設けられたことにより、中小事業者に課徴金が賦課される場合はかなり限定されることになるでしょう(売上額が低いため課徴金が課されない場合でも、措置命令等の違反による処分等を受けることは勿論です。)。
(3)対象期間
課徴金対象期間(この期間内の売上額を元に課徴金が算定される。)は、不当表示をした期間に加えて、不当表示を止めた日から6か月以内に取引をした日までとなり、最長で期間の最終日からさかのぼって3年間となります(8条2項)。
不当表示を止めた後に取引をした場合の売上額も、一定の範囲で課徴金算定の対象となりますので注意が必要です。
例外的取扱いとして、事業者が一般消費者の誤認を解消するために内閣府令で定める措置を採った場合は、その日が期間の最終日となります。
(4)主観的要素
立法時には課徴金の要件としてどのような主観的要素を要求するべきかについて議論がありました。実業界からは過失によって不当表示をした場合まで課徴金を課すことは不適当とする意見もありましたが、結局不当表示防止のインセンティブを高めるために過失の場合も対象に含めることになりました。主観的要素の立証責任は行政にあると解されています。
違反事業者が不当表示であることを知らず、かつ知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められるときは、課徴金は賦課されません(8条1項ただし書)。通常の商慣習にしたがっていれば、「相当の注意」を尽くしたことになるとされていますが、今後明確化のためのガイドラインが作成される予定です。
事業者としては、過失(注意義務違反)による不当表示を防止することが今後のテーマとなりますが、注意義務の基準となる「通常の商慣習」は決して一義的なものではありません。今後は事業者にとって分かりやすいガイドライン等の作成が強く望まれるところです。
2.自主申告による課徴金額の減額
違反事業者が違反行為を自主申告した場合は、課徴金額の2分の1が減免されます。ただし、その申告が調査があったことにより課徴金納付命令があることを予知して行われた場合は減免となりません(9条)。
不当表示を早期に発見し、消費者を保護することを趣旨とする制度です。全額の減免は、事業者がある程度の利益を得た後に自主申告をするといった悪用を許す事態となるため採用されませんでした。
3.被害回復(自主返金)
事業者が所定の手続に沿って自主的に顧客に対する返金を行った場合、返金額に応じて課徴金の減額または課徴金納付を命じない措置を受けることができます(10条、11条)。このような被害回復制度は、独占禁止法や金融商品取引法の課徴金では存在しない新たな制度です。事業者が本制度による減免を受けるには、実施予定返金措置計画を作成し、内閣総理大臣の認定を受けたうえで、返金措置を実施し、報告期限までに報告することが必要です。
4.除斥期間
課徴金対象行為をやめた日から5年を経過したときは、課徴金は賦課されません(12条7項)。
5.弁明の機会の付与
違反事業者に対する手続的保障として、弁明の機会が付与されます(13条~15条)。