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平成27年からの相続税制改正にはどう対処すべきか

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はじめに

2015年(平成27年)から相続税制が大きく変わります。最も大きな変更点は、控除額が大きく引き下げられることです。

控除額は、現在は、「5000万円+1000万円×法定相続人の数」ですが、平成27年1月1日以降の相続で「3000万円+600万円×法定相続人の数」となります。

また、次のとおり2億円を超える相続財産に対する相続税率が引き上げられます。

改正前

相続税対象額 税率 控除額
1億円超3億円以下 40% 1700万円
3億円超 50% 4700万円

改正後

相続税対象額 税率 控除額
1億円超2億円以下 40% 1700万円
2億円超3億円以下 45% 2700万円
3億円超6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

 

本稿では、弁護士の立場からどのような相続対策が有効であるかを見ていきます。

相続税対策と問題点

生前贈与

生前贈与は相続財産を減少させる点で最も有効な方法ですが、よく知られているとおり贈与税との関係が重要です。

基礎控除を使う

手軽に利用できる贈与税対策は、基礎控除の範囲で贈与することです。2014年10月現在、贈与の基礎控除額は年額110万円です。そのため、千万円単位の贈与には長い年月がかかるという問題があり、あくまでも長期的な対策になります

毎年一定額を贈与している場合(例えば、毎年100万円の贈与を10年間継続した場合)は、税務当局からは最初から「総額1000万円を贈与する意思があった」と判断され、総額に対する贈与税が課されることもあります。基礎控除の範囲内であっても、毎年一定額を贈与する「定期贈与」は避けたほうが無難といえるでしょう。

住宅資金贈与非課税制度を使う

sumai両親、祖父母などから住宅取得資金として贈与を受けた場合に一定の金額が非課税となる制度です。非課税額は、平成26年中の贈与の場合、省エネ・耐震住宅の購入の場合は1000万円、一般住宅の購入の場合は500万円です。本制度が利用できるのは、平成26年12月31日までになされた贈与であり(ただし、平成27年の税制改革で制度が延長される可能性はあります)、次のようなかなり厳しい条件があります。

    1. 住宅の取得に充てるために金銭の贈与を受け、実際にその金銭を住宅の取得資金に充てていること。居住用不動産そのものの贈与や住宅取得後に贈与を受けた金銭は対象になりません。
    2. 直系尊属(父母・祖父母等)からの贈与であること。
    3. 贈与を受ける者がその年の1月1日において20歳以上であること。
    4. 贈与の翌年3月15日までに住宅の引渡を受け、同日までに居住していること、または居住することが確実であると見込まれていること。贈与を受けた年の翌年の3月15日までに物件の引渡を受けることができなければ、適用を受けられません。そして、同日までに住み始めるか、または住むことが確実であると見込まれ同年の12月31日までに住み始めることが必要です。
    5. 建物の登記簿面積が原則として50㎡以上240㎡以下であること
    6. 中古住宅の場合は建物の築年数が、マンション等耐火建築物なら25年、木造等耐火建築物以外なら20年以内であること。
    7. 贈与の翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告を行っていること。
    8. 贈与を受ける者の贈与を受けた年の所得金額が2000万円以下であること。

教育資金の一括贈与の非課税制度を使う

30歳までの子・孫に教育資金を贈与する場合、贈与者(直系尊属)が子・孫名義の金融機関の口座等に教育資金を一括して贈与することにより、子・孫ごとに原則として1500万円までが非課税となります。

この制度では、金融機関と教育資金管理契約を締結し、預金の使途が教育資金に使われていることについて当該金融機関のチェックを受ける必要があります。受贈者が30歳に達すると口座は終了となり、残高がある場合は贈与税が課税されます。

贈与は必ず書面にすること

民法上、贈与は書面による必要はなく、口頭でも可能とされています。しかし、書面によらない贈与は履行前に一方的に撤回ができるなどの問題がありますし、税務当局に対しても明確に贈与であることを証明していく必要があります。

したがって、贈与にあたっては、弁護士のアドバイスの元に法的に問題のない贈与契約書を作成すべきです。さらに安心のために公証役場において、贈与契約書を公正証書化にすることをお勧めします。公証人が作成する公正証書は非常に強い証明力があり、日付けをさかのぼることができません。贈与の当事者間で後日紛争になる可能性をなくし、税務当局に対する証拠を残す点での点で公正証書は有効な方法となります。

形だけの贈与にしない

贈与契約を締結したとしても、現実に財貨の移動がなければ贈与とは認定されません。振込などの客観的に移動が証明できる方法によるべきです。この点、贈与税の申告を毎年していたとしても、現実に財貨の移動がなければ同様となります。

特別受益に注意

生計の資本としての贈与は、民法上、「特別受益」となります。例えば、相続人である兄弟A・BのうちAが1000万円の生前贈与を受けていた場合、相続財産にその1000万円を加えてから相続分を計算します(これを「持ち戻し」といいます)。Aはその法定相続分から1000万円を差し引いた額を相続することになります。

持ち戻し前の相続財産額が7000万円である場合、A・Bそれぞれの法定相続分は7000万円+1000万=8000万円の2分の1の4000万円となります。Aは、法定相続分4000万円から特別受益である1000万円を控除した3000万円を相続することになります。なお、Bは7000万円からAの相続分を除いた残りの4000万円を相続します。

それでは、持ち戻し後のAの法定相続分が特別受益である1000万円を下回った場合はどうなるでしょうか。この場合、Aの相続分はありませんが、特別受益と相続分の差額を返還する義務はありません。ただし、他の相続分の遺留分を侵害している場合は遺留分減殺請求を受ける可能性はあります。例のBについては、持ち戻し後の相続財産の4分の1が遺留分として認められます。

相続税対策としてのアパート等の建築は安全か?

一般に生前にアパート等の建物を建築することが相続税対策とされています。

確かに、相続税の算定では、現預金は額面でしか評価されないのに対し、土地は原則として路線価、建物は固定資産評価額で評価されます。建物の固定資産評価額は一般に建築費用よりも低額ですので、現預金として残しておくよりも建築費にあてた方が相続税の評価上は有利となります。

しかし、複数の相続人がいるような場合は、建物の相続処理について見解が対立する可能性があります。その場合、建物に居住している相続人が他の相続人に相続分相当額を支払う方法(代償分割)か、建物を売却して代金を相続人で分ける方法(換価分割)で分割を行うことが一般的です(なお、建物を相続人で共有化する方法(現物分割)もありますが、管理や費用の分担をめぐってトラブルになりやすいことから、あまりお勧めできません。)。

代償分割・換価分割のいずれの方法を取るにしても、現実に相続人が取得する金額は、建築費用を使わずに現預金として残していた場合よりも低額になってしまうことになります。

したがって、建物を建築するかどうかの判断に際しては、建物をめぐる相続人間のトラブルの可能性を考慮しながら、実際の節税効果をシミュレーションする必要があります。

さらに、アパートやマンションなどの賃貸住宅を建築する場合、経営の負担やメンテナンス費用等の固定費が発生すること等の様々なリスクが伴います。

最後に

以上見てきましたとおり、相続税対策としては、生前贈与や不動産の建築という方法が中心となりますが、いずれもリスクがあり、専門的知見が必要となります。

対策に関しては、周囲や専門家の意見を聞いたうえで慎重に判断するべきです。

*本記事は2014年10月8日現在の情報に基づいています。

九段アローズ法律事務所では、生前贈与などの相続対策全般のご相談に応じています。

詳しくは相続特設ページをご覧ください。

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