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平成26年会社法改正のポイント

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kokkai平成26年6月20日、会社法の一部を改正する法律が成立しました。改正法の施行は平成27年4月となる見通しです。今回の改正は、多岐にわたっており、実務に与える影響が大きいと予想されます。本稿では、上場会社のみならず、中小企業においても注意するべき改正点を取り上げます。

Ⅰ 中小企業が注意するべき改正点

1.監査役の監査範囲を会計監査に限定している場合の登記義務

定款で株式の譲渡制限を定めている株式会社は、定款で監査役の監査の範囲を会計監査に限定する旨定めることができます。今回の改正では、監査役の監査の範囲を会計監査に限定する場合はその旨を登記することが義務づけられました(911条3項17号)。当該登記は、改正会社法の施行後最初に監査役が就退任する際に行う必要があります。

中小企業のほとんどは非公開会社であり、監査役の監査の範囲を制限していますが、監査役の就退任の際に上記登記を行うことを忘れないようにしましょう。

2.多重代表訴訟制度の新設

改正法では、新たに親会社の株主が子会社の役員の責任について株主代表訴訟ができる制度(多重代表訴訟制度)が設けられました(847条の3第1項)。A社の株主が子会社B社の役員に対する代表訴訟を提起する場合の要件の概要は次のとおりです。

①A社はB社の株式の100%を所有していること

②B社の株式の帳簿価額がA社の総資産の5分の1を超えること

③A社の株主が同社の議決権または発行済株式の1%以上を6か月以上継続して有していること

このように対象となる子会社の範囲や代表訴訟を提起できる株主の資格を厳しく限定しているため、上場会社では本制度が利用される場面は限られてきますが、中小企業ではなお注意が必要です。

3.社外役員(取締役・監査役)の範囲の変更

社外役員については、要件が厳格化され、親会社や兄弟会社の関係者でないことや(2条15号ハ、16号ハ)、関係者の近親者(配偶者または2親等内の親族)ではないことが必要となりました(2条15号ホ、16号ホ)。

他方では、過去10年間当該会社または子会社の業務執行取締役等でなかった者は社外取締役になることができるようになりました(2条15号ロ)。

社外取締役の範囲の変更は、改正法施行時に社外取締役がいる場合には、施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時から適用されます。改正法の施行が平成27年4月である場合、3月決算の会社であれば、遅くとも平成28年6月の定時株主総会において、改正後の要件を満たす社外役員を選任する必要があります。

4.責任限定契約を締結できる取締役・監査役の範囲の拡大

業務執行取締役・執行役または支配人その他使用人でない取締役と全ての監査役は、定款の定めにより、会社との間で責任限定契約を締結することが可能になりました。これに伴い責任限定限度額も、業務執行をしていたか否かで区分する形に変更されました(425条1項)。

したがって、単に取締役会のメンバーにすぎない業務執行に関与しない取締役と監査役は、これまでのように社外の要件を満たさなくても、責任限定契約契約の締結が可能となります。

会社は、今後、役員の人材確保の点から、現行の責任限定契約の対象・内容を見直し、その旨の定款変更を行うべきかを検討する必要があるといえます。

5.株主名簿等の閲覧等の拒絶事由の削除

株主名簿等の閲覧等の拒絶事由であった「請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、またはこれに従事するものであるとき」が削除されました(125条3項、252条3項)。

 Ⅱ 主に公開会社に関わる改正

1.社外取締役設置義務化の見送り

法制審議会では、コーポレート・ガバナンス強化の一環として社外取締役の設置を義務化する案も提案されましたが、経済界等からの反対論が根強く、結局義務化は見送られることになりました。
しかし、改正法では、一定の要件を満たす公開会社が社外取締役を選任しない場合は、株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明や事業報告への記載が義務づけられます(327条の2)。
ここでは、社外取締役を「置かない理由」ではなく、「置くことが相当でない理由」の説明・記載が求められます。さらに、今後、会社法施行規則において、社外監査役が2名いることのみをもって「置くことが相当でない理由」とすることはできないとの規定が設けられる予定です。

したがって、今後、会社は、「置くことが相当でない理由」について積極的かつ説得的な説明・記載を行うことを要求されることになりますが、これはかなり ハードルが高いと思われます。報道によると、法務省は、こうした厳しい説明・記載義務を設けることで、事実上社外取締役を義務づけるものと考えているようです。

なお、改正法の附則では、施行後2年を経過した後、社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案した上で、必要があると認める場合には、社外取締役設置の義務付け等所要の措置を講ずることが明記されています。

 2.監査等委員会設置会社の新設

社外取締役の導入を促すため、監査等委員会設置会社制度が新設されました(326条2項)。監査等委員会設置会社とは、監査役・監査役会が設置されない代わりに、3名以上(過半数は社外取締役)の「監査等委員である取締役」によって構成される監査等委員会が設置される会社です。なお、監査等委員会設置会社が新設されることによって、これまでの委員会設置会社は「指名委員会等設置会社」と呼ばれることになります。

3.会計監査人の選任等の議案決定権限が監査役会に変更

監査役設置会社において、株主総会に提出する会計監査人の選解任・不再任に関する議案の内容は、監査役会が決定することになりました(344条1項、3項)。

Ⅲ 組織再編やM&Aに関する改正

組織再編に関しては、多岐にわたる改正がありました。

1.支配株主の異動を伴う第三者割当による新株発行には株主総会の普通決議が必要

募集株式の発行等により支配株主が異動する場合において、有価証券報告書を提出していない公開会社は、株主に通知または公告をし、総議決権の10%以上を有する株主が反対の通知をしたときは、株主総会の承認による決議を受けることが義務づけられました(206条の2第1項から第3項、244条の2第1項から第4項)。ただし、当該公開会社の財産の状況が著しく悪化している場合において、当該公開会社の事業の継続のため緊急の必要があるときは、株主総会の承認決議は不要です(206条の2第4項、244条の2第5項)。

なお、定款で株式の譲渡制限を規定しているいわゆる非公開会社では、従来から第三者割当による新株発行に株主総会の特別決議が必要です(199条1項、2項)。

2.一定の要件を満たす子会社の株式等の譲渡は株主総会の特別決議が必要

子会社株式の譲渡は、親会社にとって実質的に事業譲渡であるとして、一定の場合に株主総会の特別決議が必要となりました(467条1項2号の2)。特別決議が必要となるのは、①親会社の総資産の5分の1以上を占める子会社株式の譲渡で、②これにより親会社が当該子会社の議決権総数の過半数を有しなくなる場合です。

3.特別支配株主による株式売渡請求制度(キャッシュ・アウト)

総株主の議決権の10分の9を直接・間接に保有する株主(特別支配株主)が、他の株主に対しその保有する株式の売渡しを請求できる制度が新設されました(179条1項)。

4.株主による組織再編の差止請求制度

組織再編(合併、会社分割、株式交換、株式移転)が法令または定款に違反する場合で株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、会社に対し、当該行為を止めることを請求することができるようになりました(784条の2、796条の2、805条の2)。

5.詐害的な会社分割における分割会社の債権者保護

債権者を害する会社分割が行われた場合に、承継会社に債務の履行を請求することができない分割会社の債権者(残存債権者)は、承継会社に対し、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができるようになりました(759条4項、761条6項等)。

Ⅳ 最後に

以上改正会社法の概要を解説しましたが、本稿で触れてない細かな改正点は多数あります。

会社法は複雑であり、法律だけでなく今後公表される予定の会社施行規則等を踏まえて解釈することが必要となります。会社法の制度を利用するにあたっては、法令だけではなく、定款の定めがどのようになっているのかの確認も要します。

改正法の対策においては、会社法に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

 

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